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東京高等裁判所 昭和50年(ネ)1573号 判決

控訴人

株式会社ワシントン・ビル

右代表者

蕭松芳

控訴人

有限会社ワシントン・ホテル

右代表者

蕭松芳

右両名訴訟代理人

馬塲東作

外一名

被控訴人

キヤセイ・パシフイツク・エアウエイズ・リミテツド

右代表者

アンドルー・グラハム・スチユアート・マツカラム

右訴訟代理人

梶谷玄

外二名

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人らの負担とする。

事実《省略》

理由

当裁判所も被控訴人の控訴人らに対する本訴請求を正当として認容すべきものと判断するが、その理由は、つぎに一、ないし四のとおり訂正付加するほか、原判決理由欄に説示されているところと同じであるから、これを引用する。

一、二、三、四〈省略〉

五最後に、当審で新たに提出された控訴人らの時効の抗弁について考える。

控訴人らは、本訴請求にかかる過払金返還請求権は、民法第一七四条第四号に定める旅店の宿泊料に関する債権であるから同法条による消滅時効が完成した旨主張する。

しかしながら、右法条にいう旅店の宿泊料債権とは、旅店の営業者が顧客に対して有する宿泊契約上の宿泊料債権を指称するものであつて、本件ホテル施設利用料金の過払いによる不当利得返還請求権が右法条にいう旅店の宿泊料債権そのものに該当しないことは多言を要しないところであり、また、これを同法条にいう旅店の宿泊料に関する債権と同視して同法条に定める短期消滅時効を認めなければならない合理的な根拠は見出し難く、右短期消滅時効を認めなかつたからといつて、このことが控訴人ら主張のように宿泊料債権はつき短期消滅時効が認められているのと対比し公平を失するものとも思われないのである。

そうすると、本件不当利得返還請求権につき消滅時効が完成したとする控訴人らの抗弁は、これ以上判断を加えるまでもなく採用することができない。」

よつて、右と結論を同じくする原判決は相当であつて控訴人らの本件控訴は理由がないので民事訴訟法第三八四条によりこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき同法第九五条、第八九条、第九三条を適用して、主文のとおり判決する。

(岡松行雄 安倍正三 唐松寛)

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